[vol.2] デザイナーとしての旅立ち
M:デンマークについてはいかがでしたか?
P:ケアホルムは良いデザイナーだ。またヴァーナー・パントンとは友人だ。彼は亡くなってしまったけど、ご夫人からは今でも便りがあるよ。
M:北欧のデザインに出会って、デザイナーになろうと決心したのですか?
P:そうだ
M:アメリカのイームズやネルソンの影響は受けなかったのですか?
P:もちろん受けた。彼等の事を知ったのは、私がギャラリー・ラファイエットで働いていた時だ。当時私は既に結婚していて、子供もいた。一人目の家内はスペインと中国人のハーフだった。ちなみに娘は医者になっているよ。イームズの話をしよう。イームズの作品は、ギャラリーの女性ディレクターから借りたインテリア専門誌に紹介されていたのを見たのが最初だ。毎晩穴が開くほど眺めたよ。イームズのデザインは完璧だと思った。
M:そこにあるのはイームズのラウンジチェアですよね。
P:そうだ。イームズのデザインのすばらしいのは、余計なものを加えずに、技術で勝負しているからだ。驚くほど潔癖なのだよ。
M:イームズとは実際に会いましたか?
P:ある時フランスでイームズの講演会が行われた。終わってから近寄ったけれど、たくさんの人に囲まれて近づけなかった。しかし我々はつながっていると思っている。
M:テレパシーによってですか?
P:そうだ(笑)。
M:ネルソン等に会いにアメリカへは会いに行かなかったのですか?
P:私は今でもそうだが、恥ずかしがりやなんだ。ネルソンの未亡人には会ったが、ネルソンには会っていない。残念だ。
M:古い様式のデザインは好きでは無かったのですか?
P:過去は過去として大好きだ。私は現在の状況には感心が持てないが、過去と未来には興味があるよ。私が紹介されたデザイン事務所は、当時モダニズム全盛のスカンジナビアからの影響を強く受けていた。実際にスウェーデンのデパートの仕事もしていた。私も1950年から北欧へ旅に出た。
M:そこではどんな作品を見ましたか?
P:アルヴァ・アアルトの作品を見た。イギリスやフランスは退屈なところだったから、余計にすばらしく思ったよ。
M:フィンランドには戦争の影響は無かったのですか?
P:戦争はあった。フィンランド北部の森で見た風景が今でも忘れられない。何か司令塔のような物だ。丸太の箱のような物に1m50cmぐらいの土と岩を積み、その上にさらに丸太を積む。そこにはロシアかドイツかフィンランド軍のスキーが残っていた。錆びたブーツの留め金と腐ったスキー板が山積みになっていて、信じられない光景だった。
M:フィンランドでは、フランスやイギリスの寂しい現実とは違った光を見たのですか?
P:アアルトの設計した市役所やホテルなどのモダンさにとても驚いた。
アルヴァ・アアルトのプロダクト。
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