ジャンカルロ・ピレッティ氏
スペシャルインタビュー

2001年からジャンカルロ・ピレッティの名作チェア「プリア」を販売していた私達は、製造メーカーであるイタリアのカステッリ社からの紹介で、2003年にピレッティ氏とのインタビューの機会を得る事ができました。紹介文献も少なく、あまり知られていない初期の歩みに関して、ジャンカルロ・ピレッティ氏のロングインタビューを公開いたします。

会社設立と仕事の進め方

メトロクス
(以下メ)
(以下メ):
自身のスタジオを開いたのはいつですか?
ピレッティ氏
(以下ピ)
(以下ピ):
カステッリには20歳から32歳まで12年いたので、‘72年だと思います。独立した当初はあまりクライアントがいませんでしたがね。
その後、オカムラと二晩連続で夕食をとることがあり、オカムラのために継続的にデザインするようになりました。というのも、オカムラはDSC106を販売していましたから。
メ:
しかし、‘79年までカステッリからあなたの作品がいくつか出ています。
ピ:
そうです。もう一人のデザイナーであるエミリオ・アンバースと会社を設立しなくてはいけなかったのです。一緒にイトーキバーテブラドーサルをデザインしました。我々がデザインし、カステッリが欧州を担当し、イトーキが日本をみました。そしてそのほかの国は他社がフォローしたという具合です。いずれにせよフリーデザイナーとしてね。
メ:
どの作品があなたにとって一番経済的な貢献をしているのですか?
ピ:
最近の作品のピレッティコレクションです。とても数多くが売れて、米国でもまだたくさん売れています。

オカムラ ピレッティコレクション

メ:
会社として設立したのはいつですか?
ピ:
たしか、78年か79年です。プロコードという社名です。プロダクション・コーディネーション。発注者なしでデザインします。金型を発注してお金を払うのも私です。商品開発に必要な全てのコスト管理を自分で行います。
メ:
私達が知る限り、あなたのような仕事の仕方は、例えばピニンファリーナやイタルデザインに似ていますね。
ピ:
私はこういう方法しかとりません。
メ:
このような仕事のやり方をしている他のデザイナーをご存知ですか?
ピ:
他の人のことはわかりません。アンバースは私から学びましたが、彼がこうやるとは思えません。アンバースだけでなく、どのデザイナーも自ら型などを買わないでしょう。高いですよ。
メ:
そうですね。それではあなたが金型を買えるという経済的源は何なのですか?
ピ:
私は稼ぎの半分近くを金型に投資します。好きですから、こういうのが楽しいのです。
メ:
あなたの稼ぎの半分を・・・
ピ:
半分かそれ以上で型を買います。なぜなら常に型代は上がっていきます。今は不景気なので私は全部支払済みでクライアントのところに向います。私はノーという返答を聞いたことがないです。オカムラはイエスと答えました。他の皆もイエスと言います。全部出来上がっているのですから。
メ:
とにかくあなたの仕事のやり方に感銘を受けました。なぜなら現在工業デザインの市場は常に値下げを要求し、生産は欧州からアジアの発展途上国へと移行しています。そこで工業デザイナーが生き抜くのは大変難しくなっています。しかし、あなたのようなスタイルで仕事をしていくと、多分、長く生き抜けるのではありませんか?
ピ:
結果的にはそうかもしれませんね。私は素晴らしい人生を過ごしてきました。自分で望むことをやり、画家や彫刻家と同じ自由さでデザインしてきました。これは私にとって最高のことです。
朝非常に早い時刻からスタジオに入り、何かをデザインします。今も15のプロジェクトを抱えています。見本市のための準備はできたか?などと人に聞かれるのは私の望むところではありません。この不況と言えそうな中でも、未だ私はそう感じません。沢山売れていますからね。

椅子をデザインする理由

メ:
あなたは、例えば家電製品とか違ったものをデザインする気はありましたか?
ピ:
そうですね、そのようなもののデザイン案はたくさんあります。でもそれらは発注者のためにデザインし直さなければならないでしょう。私はそれはやりたくないのです。
メ:
最後の質問です。デザイナーにとって椅子のデザインというのは特別なものですか?あなたの作品もデスクとかテーブルより、椅子はたくさんの種類があります。
ピ:
私も自分で何故椅子を作るのか自問することがあります。椅子は決して完成しません。身体は常に新しい機能を求めます。今はコンピューターの時代ですから、神経質な人がコンピューターを使って座る椅子なら、そのタイプの人にあったラインのデザインであるべきとか(笑)。
私はモノとして楽しく、彫刻としても美しく、それにいつも「動き」のある作品を作ります。椅子は閉じたり動かしたり出来ます。積み上げる事もできます。これを考えるのが楽しいのです。なぜ椅子を必要とするかを説明するならば、まだ多くの可能性があるからだと思います。生涯、心から好きと言える一脚に到達していないのです。でも全てやってみたら、最後には何も遺らないかもしれないね・・・。

2003年10月 イタリア・ボローニャ ピレッティ氏の自邸にて