マックス・ビルが1935~1938年に手掛けた、コンクリート・アート作品。オリジナルは、パリの出版社から冊子形式で発表され、タイトルや解説などは全てフランス語で記述されています。発想の母体となる1つのテーマ(原図)を基に「連続」「展開」「発展」のキーワードから15のバリエーションを展開した作品です。
テーマ(原図)とは、正三角形からその一辺によって正方形を描き、同様に「正方形→正五角形→正六角形→正七角形→正八角形」を構成。それを1つの線で結んだスパイラル状の図画です。その形を、氏が定めた造形上のルール(点を打つ順、線を引く順、その方向など)に従って、図法的なアレンジを加えることで15のバリエーションが展開されています。
コンクリート・アート(Concrete Art)
絵画なら色彩と構図、彫刻作品なら輪郭と量塊といった、形式上の特性のみをテーマとする具体的な美術表現。感情的な表現を一切排し、客観的な外観と数学的な構成を特徴とする、具象美術または具体美術(concrete=具象、具体)のこと。ジョセフ・アルバースの作品などが有名。
正三角形から正八角形まで、各多角形の外周をなぞりながら特定の箇所で次の多角形へと移り渡って、折り曲げ線による螺旋形を描く。
テーマ(原図)の螺旋形を各多角形毎に閉じて面とする。正三角形には黄、正方形には赤というように、各多角形毎に黄・赤・緑・青・橙・紫の計6色を与え、各図形毎に固有の色とする。以降の彩色のルールとなる。
テーマ(原図)の螺旋形を各多角形毎に半円でつなぎ閉じる。さらに全ての辺上にそれを直径とする円を描く。テーマ(原図)の螺旋形はそのまま描かれる。線画として表される。
各多角形の頂点にあたる位置に小さな色点を置く。各点の色はどの多角形に属するかによって、バリエーション1のルールにより決められる。2つの多角形に属する点は2色に分割される。
各多角形の対角線を色線で描く。各線の色はどの多角形に属するかによってバリエーション1のルールにより決められる。
各多角形の外接円を描く。多角形を閉じた箇所にあたる辺は一定の太さで描く。黒地に白線で描かれる。
バリエーション2で描かれた各辺上の円を多角形の各頂点毎に、その外側、内側と向きを変えてつながる半円とし、その連続によってテーマ(原図)の螺旋形をなぞる。各半円の色はバリエーション1のルールにより決められる。
各多角形の内接円を描く。テーマ(原図)の螺旋形と内接円で囲まれる面を淡い黄みをおびた灰色とする。各内接円円弧の連続による近似螺旋をテーマ(原図)の螺旋の向きとは逆方向に描く。
バリエーション5で描かれた各多角形の外接円について、内側から順に2つの円が互いに重なる面について配色する。バリエーション1のルールに従って内側から黄・赤・緑・青・橙・紫の計6色を配する。重ならない面は白とする。
各多角形の内接円と外接円を描く。内接円同士の交点には小さな点を、外接円同士の交点には大きな点を置く。また各円の中心に小さな色点を置く。各色はバリエーション1のルールにより決められる。
バリエーション9で描かれる各多角形の内接円と外接円によって分割される面について、互い違いになるように淡い黄みをおびた灰色で塗り分ける。
バリエーション4で描かれる対角線を黒の細線で表し、それによって生じる囲まれる面と分割される面について、互い違いになるように、白と黒とバリエーション1のルールに従って各色で塗り分ける。
各多角形毎にバリエーション9で描かれる内接円と外接円で囲まれるドーナッツリング型の面について、バリエーション1のルールに従って各色を与える。そのリングが互いに重なる面の箇所は黒面とする。
各多角形の内接円を描く。それぞれの内接円で分割される面について互い違いになるように淡い黄みをおびた灰色で塗り分ける。
各多角形面の外形を[1]のルールによる色線で表し、さらに黒細線で対角線を描く。外形線は隣り合うため2色の線が並列して描かれる。
バリエーション7で描かれる内接円を元にして、テーマ(原図)の螺旋の向きと同方向に一定の太さで近似螺旋を描く。各円弧の連結箇所にあたる始点と終点、各円弧の中心とを結び黒細線で描く。
【内接円】多角形の各辺に接するよう、その内側に描かれる円。
【外接円】多角形の各頂点に接するよう、その外側に描かれる円。
【近似螺旋】本来、螺旋は曲率が変化し続ける曲線から成るの対し、一定の区間は同じ曲率であるのに視覚的には同様の印象に見える曲線のこと。近似的な螺旋。
資料協力:北海道教育大学旭川校デザイン研究室・八重樫 良二
1つのテーマ(原図)を基に「連続」「展開」「発展」のキーワードから生み出された
「1つのテーマに対する15のバリエーション」を、2007年にポスターとして復刻しました。 オリジナルのリトグラフに忠実な色を、マックス・ビル財団の承認を得て再現しています。日本国内での印刷とマックス・ビル財団でのチェックを繰り返して再現された、オリジナルのリトグラフに忠実な色。マックス・ビル財団承認アイテムです。
用紙には、印刷適正と風合いの良さを兼ね備えた「ヴァンヌーボ」を使用。多くのデザイナーに支持されるファインペーパーです。
ポスターのみの基本仕様のほか、オプションとしてデザインや素材の異なる3種類のフレームをご用意しました。インテリアに合わせてコーディネートいただけます。
マックス・ビル生誕110周年を記念して製作された特別な額装のアートフレーム。上質なマット使いで高級感のある印象に。フレームは、セルトフレーム(樹脂製)とピソフレーム(木製)からお選びいただけます。
マックス・ビルの稀少なリトグラフ作品のご紹介
資料協力:田邉学