パウラ・デイ インタビュー
ロビン・デイの美学に導かれた、モジュール式家具との出会い

ロビン・デイの娘であり、ロビン&ルシアン・デイ財団設立者でもある、パウラ・デイ氏へのインタビューが実現しました。
ロビン・デイの美意識や、人柄に迫ります。

ものづくりの町に育まれた、熱き夢の実現

METROCS
(以下M)
(以下M):
ロビン・デイが家具デザイナーを志したきっかけは何だったのでしょうか。
Paula Day氏
(以下P)
(以下P):
私の父は、当時イギリスの家具産業の中心であったロンドンの北西に位置する町、ハイ・ウィカムで、工房や工場に囲まれて育ちました。彼はものづくりが大好きで、特に絵を描くのがとても上手でした。
やがて、奨学金を得て、地元の美術学校とロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートに通い、家具デザイナーとしての訓練を受け、1939年に卒業しました。
1940年代は展覧会やグラフィックデザインの仕事をしていましたが、いつの日か家具をデザインすることを夢見ていたようです。彼の大きな転機は、1951年にロンドンで開催された「フェスティバル・オブ・ブリテン」でお披露目されるロイヤル・フェスティバル・ホールのすべての家具をデザインするように依頼されたことでした。

目的と構造を表現する、良いデザインを

M:
念願叶って、グラフィックから家具へと華麗に活躍の場を変えたのですね。そんな彼が、デザインにおいて一番大切にしていたことは何でしょうか。
P:
1962年、彼は有名な言葉を残しています。

良いデザインとは、その目的を十分に果たし、健全に構築されなければならない。その目的と構造をデザインで表現しなければならない。
父のデザインに対する考え方は控えめで実用的なものでした。デザインはうまく機能し、長持ちするように作られるべきだと考えていたのです。彼にとって美しさとは、こうした実用的な問題に対する知的で洗練された解決策でした。機能や構造は隠すべきものではなく、表現し、賞賛されるべきものだったのです。

構造をデザインとして表現したフォームグループ

M:
彼が影響を受けた、もしくは尊敬していたデザイナーやアーティストはいましたか。
P:
デザイナーとして、ハンス・J・ヴェグナーなどデンマークのモダニストの控え目な優雅さと、チャールズ・イームズなどアメリカの先進的なデザイナーの両方から影響を受けました。
また、個人的には、私の両親は、親しい友人であったフィンランド人デザイナーのタピオ・ヴィルッカラルート・ブリュックの作品が大好きでした。

モジュール式家具との出会い

M:
Form Groupは、『ideal home』誌からのリクエストでデザインされたと聞いています。
モジュール式シーティングのForm Groupが生まれるきっかけは何だったのでしょうか。
P:
1948年のMoMA主催のローコスト家具コンペティションで、同僚とともに応募したモジュール式ストレージシステムが優勝したのをきっかけに、彼は常にモジュール式家具のデザインに強い関心をもっていました。
Form Groupのモジュラー要素は、使う人のニーズの変化に応じて再配置や追加ができるようになっています。これは、派手な個々の作品よりも、人々が必要とするニーズを満たす家具に興味を持っていた、インテリアデザインに対する彼の実用的で分析的なアプローチを反映していると思います。
M:
Form Groupが1961年に受賞したデザイン・センター・アワードは当時のイギリスにおいてどれほど栄誉ある賞だったのですか。
P:
1956年、工業デザイン協議会は、英国デザインの最高峰を代表する機関としてデザインセンターをロンドンに設立しました。 毎年、デザイン・センター・アワードは特に優れた新しいデザインのいくつかに権威ある認証マークを授与します。その認証マークの入ったデザインセンター賞のステッカーは、受賞製品の目印となり、現在もミッドセンチュリー期のブリティッシュデザインコレクターに非常に人気があります。

ローコスト ストレージユニット
プレゼンテーションパネル
Presentation panel 1 (Storage Units:Theory and Perspectives), designed by Robin Day and Clive Latimer, submitted to the International Low-Cost Furniture Design Competition at the Museum of Modern Art, New York, 1948

ラバーウェビング

M:
Form Group以外にも、Gatwick Seating(1958年)でラバーウェビングを使っているように、彼は好んでこの材料を使っていたように思います。当時主流だったコイルスプリングの代わりにラバーウェビングを使用するというアイデアは彼のアイデアなのでしょうか。
P:
はい、彼は他にもChevron Chair (1959年)にもラバーウェビングを使用しています。軽量で交換可能な点が魅力だったのでしょう。スプリングは張地やクッションの下に隠さなければなりませんが、ラバーウェビングはあえて椅子の背面や座面の下側に露出させることで、その構造を「表現」し、美しいストライプ模様を作り出しています。

ロビン・デイと日本、ミニマリズムの美

M:
彼の日本とのつながりや興味を抱いていたことがありましたら教えてください。
P:
彼は日本のインテリアの優雅なミニマリズムに直感的な親近感を感じていました。私が子供の頃、日本への出張から帰ってきた彼が、高級なペーパーナイフや、象嵌細工の硯箱、優雅な模様が施された櫛など、美しいお土産を持ってきたのをよく覚えています。また彼は日本の国旗のシンプルなデザインに感心していました。
興味深いことに、彼のデザインが今日本で高く評価されているのをみると、やはりどこか親和性があるのかもしれません。
M:
最後に、メトロクスで復刻が実現した今のお気持ちをお聞かせください。
P:
高品質で本格的な復刻版によって、ロビン・デイのデザインがアジアの市場に紹介できることを大変うれしく思います。メトロクスはコラボレーションに際し、あらゆる段階で細部に細心の注意を払って下さり、一緒に仕事をするのがとても楽しかったです。

2022年5月4日
ロビンアンドルシアン・デイ ファウンデーション
ファウンダー パウラ・デイ